木澤佐登志さんの「闇の精神史」を読んだ。
木澤さんは Twitter で知って厭世的な雰囲気に惹かれて、わりとずっと追っかけている。加速主義や反出生主義といった思想を知ったのも木澤さん経由で、個人的にかなり影響を受けている。
相変わらず好きなことについて好きに書くスタイルで良かった。よくわからん人たちのよくわからん思想が大真面目に紹介されていく。で、実はそのよくわからん思想が有名な人に影響を与えたりしている。というような内容。
史実と思想の紹介が半々くらいで、史実の紹介の部分は楽しく読んだが、思想の紹介の部分は国語の試験に出てくるような文章でうおーって感じだった。
~ 余談 1 ~
Existential crisis の日本語訳が注釈なしで使われているのを初めて見たかもしれない。
自身のルーツを奪われ、根無し草(デラシネ)として世界から切り離された漂泊の人々は、実存的な危機のもとで、その代償として「未来」を与えられた。
(Kindle 版 p114/276)
心理学に熱中していていろいろ読んでいた頃は「実存的不安」と訳されていたことが多かった気がする。(10年くらい前の話なので今はどうなっているかわからない。)
「日本語」になっていくプロセスを観測しているようで面白い。
~ 余談 2 ~
木澤さんの文章では「○○だとすれば・・・・・・?」という文体がよく出てくるのだが、並行して読んでいた芥川龍之介の「河童」に似た文体が出てきてなんかシンクロした。初めて使った人は誰なんだろう。
すべての人間にメタバースが開かれているわけではないのかもしれない。むしろ、そこでは健常的=健康的な身体こそが暗に前提とされている。VRはメタバース外の身体が健常であることを要求するからだ。メタバースは、自らの身体を捨て去り、魂たちだけが住まう上位の宇宙(=メタバース)への移住を約束する。ただし、健常的=健康的な身体を持つ者だけが、その天国の扉をくぐることを許されるのだ、とすれば・・・・・・?
(Kindle 版 p219/276)
幸福は苦痛を伴ひ、平和は倦怠を伴ふとすれば、――?