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人種差別の違法性

元外国籍であることを理由にゴルフクラブへの入会を拒否した事案の裁判の解説がおもしろかった。

「判決の要旨」にこのように書かれていた。(判決文を引用しているっぽいので引用の引用になりそう。判決文ってどうやって入手するんだろう。)

日本は、人種差別撤廃条約の締約国であるところ、(中略) 人種差別撤廃条約の各規程は、その文言等に照らすと、締約国に対し、同条約の規定を裁判規範として国内の私人間に直接適用することまでを義務付けたものと解することはできないが、日本が、人種差別撤廃条約への加入に際して、同条約 4 条(a)及び(b)の規定に当たり、憲法の下における集会、結社及び表現の自由その他の権利の保障と抵触しない限度において、これらの規定に基づく義務を履行する旨の留保を付しているものの、同条約 2 条、5 条によれば、他の締約国に対する国際法上の義務として、各規定の趣旨を立法及び既存の国内法の規定により国内において実施すべき義務を負うから、不法行為法上の違法性の判断においても、人種差別撤廃条約の規定の趣旨を踏まえて解釈することが相当である。

以上によれば、本件入会拒否が不法行為に当たるか否かについては、憲法 14 条 1 項、国際人権規約B規約 26 条、人種差別撤廃条約の規定の趣旨を踏まえて、私的自治の原則や被控訴人の結社の自由と抵触しないように適切な調整をしながら,社会的に許容し得る限度を超える違法なものといえるか否かを判断するのが相当である。

日本では今のところ人種差別を包括的に禁止する法律は存在しないのかあという知識を得た。

この第二審についての個人的な理解としては、人種差別撤廃条約の内容から、ゴルフクラブ側の行為は社会的に許容し得る限度を超えると捉えられるため、民法の不法行為として成立すると判断した、ということなんだろう。

じゃあ例えば僕が10人くらいの規模の料理教室を開くとして、日本国籍であることを参加条件とした場合は不法行為が成立するんだろうか、とか考えた。炎上はしそうだけど不法行為にはならないのではないか。

あるいはとある飲食店が「○○人は入店不可」という張り紙を貼っていた場合はどうだろうか。

ちなみに「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(別名「ヘイトスピーチ解消法」)というのがあるが罰則規定は無い。どんな効果がある/あったのかは不明。

他に、個別の法律では差別を禁止しているものは存在する。例えば労働基準法では第三条には

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

との規定がある。

こちらはゴルフクラブ事案の大一審の解説

アメリカでは?

人種差別が盛んなアメリカではどんな状況なのか調べようとしたけど難しすぎた。

一応わかったところまで書くと、Civil Rights Act of 1964 によって civil rights にはなったけど United States Code には雇用における差別禁止しか明文化されていないっぽい。

アメリカでの法律の分類がよくわからん。

2024/08/09 追記

"Hate crime" という分類で法律が存在するっぽい。既存の傷害罪とかに上乗せするような形で刑が重くなる仕組みのよう。