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This is the way the world ends

note を更新した。普段は社会系の小難しい本について更新しているのだが、今回は普通に読んでめちゃくちゃ良かった「レトロゲーム超翻訳セレクト」の感想を書いた。 MGS2 に出てきた訳が超翻訳っぽくて note の方に書こうかと思ったけど変に長くなりそうだったのでやめてこっちに書く。

MGS2 は 2001 年という Facebook や Twitter が無い時代にフィルターバブルを予言していたりと、小島秀夫監督の凄さが詰まっている。

フィルターバブルが世界を崩壊へと向かわせることを力説している大佐とローズの怒涛の説教の中で、大佐は以下のフレーズを口にする

それが世界を終わらせるのだ。
ゆるやかに。

これが英語版ではこのように訳されている

And this is the way the world ends.
Not with a bang, but a whimper.

実はこの英語のフレーズは、詩人である T. S. Eliot の The Hollow Men という詩からの引用だ。

世界は空っぽの人間に満ち溢れ、泣き寝入るように、拍子抜けするような終焉を迎える。

という感じの詩の最後の部分なのだが、細部へのこだわりに定評のある小島監督のことなのでもしかしたらこう翻訳されるように日本語の台本を用意したのかもと考え、近くの図書館で The Hollow Men の翻訳を探した結果下の 2 つの資料にあたることができた。

彌生書房の「エリオット選集 第 4 巻」(1968 年)の高松雄一さんの訳では以下のようになっている。

コレガコノ世ノ終ワリカタ
バント爆ゼズニススリ泣ク。

MGS2 発売後ではあるが、岩波書房の「四つの四重奏」(2011 年)の岩崎宗治さんの訳では以下のようになっている。(この本のあとがきに岩崎宗治さんが昔に訳したものを再編した的なことが書いてあった気がするので、訳そのものは MGS2 発売前にあった可能性がある。)

こんなふうに世界は終わる
爆発ではなく啜り泣きで。

というわけで、おそらく Not with a bang... と訳されることは予定されておらず、翻訳者による粋な改変なのだろう。かっこよすぎる。

今年 MGS2 が 20 周年ということがにわかに信じがたい。 FF7 が 1997 年 1 月発売で、 MGS2 が 2001 年 11 月発売なので当時のハードとソフト両方の進歩の速さがうかがえる。最近での 5 年で言えば 2016 年に Doom が発売されて、2021 年にバイオハザードヴィレッジが発売された。まあポリゴン数が 64 から 128 に上がるのと、1 万から 1.5 万に上がるのを比較して前者を優遇するのはフェアではないけど。

ゲームのポリゴン数の記事。

あとついでに見つけた FF7 Remake のローカライズに関する記事。