オープンデータを可視化したサイトを作りオープンソースで公開した。ここで作った経緯や背景にある僕の問題意識を整理しておく。
公開したサイト → Open Data Viz
背景 1: オープンデータはもっと活用できる
政府や自治体は税金を使って集めた膨大なデータを持っていて、近年では API も整備されてデータ利活用の土壌が形成されつつある。それらのデータが可視化された状態で瞬時に見られるのが理想だけど、現状そこまでには至っていない。e-stat の統計表のページにグラフ表示の機能があるが、表示できるグラフの種類が限られているし正直使いづらいしデータの配置によってはそもそもグラフ化できないものがある。報道にしろ個人の調べものにしろ公的なデータはかなり需要があると思うのだがなぜかまとめて見ることのできる良いサイトが存在しない。なぜなのか。世の人間は僕が思ってるほどデータに興味ないのか?データをわかりやすく一般大衆に向けて発信するのは公共セクターの重要な役割だと思うのだが、私の知る限りではそのようなプロジェクトは無い。一番近いのは行政白書だろうか。行政白書が完全に Web ベースになって図がインタラクティブになれば絶対に面白い。
背景 2: 図を探すのが大変
一つ前の背景と重なる部分があるが、公的なデータが使われたとしても個別の記事への依存が強すぎて読者の参照が一時的なものとなってしまっていると感じる。例えば「近年、非正規雇用が増加傾向にある」という情報はいろんなところで目にするしそれぞれの媒体でグラフを見るが、その後参照することが難しい。「どっかでそういう図があったよなあ」ということが幾度となく発生し、その度ネットで調べて見つかったり見つからなかったりする。(ときには別の新しい情報も発掘できたりとデメリットばかりではないのだが)。「このサイトについて」にも書いてあるとおり個人的に、結合度の低い可視化された情報を一箇所に集めた空間を求めていた。
背景 3: 誰が図の正しさを保証するか
世の中に存在する図の信憑性は制作者の信用度に大きく依存している。例えば Twitter で、知らない人が貼った図と大手新聞社が公式アカウントで貼った図が同じ事柄について異なる事実を示していた場合、たいていは大手新聞社の図を信じると思う。そう判断した理由はおそらく「これまでのレピュテーションがあるから」だろう。しかし大手新聞社が歪んだ図を作らない保証はない。大手メディアや、なんなら国が作った図であっても「農林水産省のデータより作成」みたいな適当すぎる出典もよく見かける。こんなのは出典を示していないに等しい。図の提示においてその検証可能性は大事だと思っているが、世の中に存在する多くの図の場合検証が非常に難しいのが現状だ。今回データの取得・加工・表示をオープンソースにしたのはそのへんを念頭に置いてのものだ。ソースが公開されていれば第三者による検証が比較的容易になる。別に僕が作っていようが詐欺師が作っていようが関係なくなり、図の信憑性を制作者の信用度から分離すつことが可能となる。もちろんこのサイトを作ったことで世の中の図の公開の仕方が変わるとは思っていないが一種の POC というか実現方法としては多少参考になるんじゃないかと思っている。
背景 4: ただやりたかった
デジタルでインタラクティブな学習の原体験としてエンカルタがある。どのバージョンだったのかは覚えてないが、公転シミュレーションがあって月を何度も地球に衝突させていた。Desmos の登場も衝撃的で、関数を視覚的に捉えることに大いに助けられた。少ししか触ってないけど Brilliant も素晴らしいサービスだと思う。やっぱりインタラクティブだと楽しく感じるし、文字だけの情報とは別の気づきがある。前からこうしたものに対する漠然とした憧れがあり、自分でも作ってみたいという衝動があった。記憶からは飛んでいたが過去のメモを見返してみたら、データ可視化のサイトを作ることについては 4 年以上前から考えていたようである。ようやく実現できた。
後日 Open Data Viz の技術的な部分について書きたいと思う。